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オンラインで日韓のミニシアターが交流-コロナ禍のリモート交流体験記

REPORTS
2021年2月9日

山田貴子

2021年、新年を迎えて、去る2020年を振り返ってみると、突然のコロナの感染拡大に始まり、いまだ収束しないコロナ渦に今もなお 日常がおびやかされているといえます。

私が 在韓生活を送っている仁川でも、今年 中学3年になる末娘は昨年末の冬休みが始まるまで、ほとんどの学校生活を担任の先生の出欠確認で始めるオンライン授業を送ってきました。在宅勤務が基本となっている日常生活の中で、不要の外出の自粛が求められているのは、日本と同じだと思います。

2019年6月に仁川の「ミリム劇場」で開催された横浜の「シネマジャック&ベティ」との共同企画に端を発する日韓のミニシアター同士の交流事業は、19年9月の 日本での全国コミュニティシネマ会議「日韓コミュニティシネマ会議」に韓国のミニシアター関係者が参加し、日韓の映画上映者の交流が実現し、大いに盛り上がりをみせましたが、20年にはコロナ渦で日韓の行き来が、現実的には難しい状況となってしまいました。

しかし、交流は続けたいというお互いの強い意志を確認しつつ、今回の 「日韓ミニシアターオンライン交流企画」が 開催されることになりました。

イベントチラシ

仁川インディペンデントフィルムツアー

「ミリム劇場」によってセレクトされた、韓国の港町・仁川から届いた若い作り手たちによる5編のインディペンデント映画の上映、監督たちと日本のミニシアターをZOOMというプラットホームで繋いでのGV(Guest Visit監督との対話)交流が試みられることになりました。

11月14日には、「ミリム劇場」、「シネマジャック&ベティ」、そして高崎市の「シネマテークたかさき」という、日韓の3つの劇場間での リモートならではの新たな試みとしての 「仁川インディペンデントフィルムツアー」交流が開催されたのです。

私も不足ながら、オンライン通訳として参加しました。このような時期にあっても映画館に足を運んで映画を見てくれる方がいることに驚かされると共に 日韓間の映画に対する 観客らの関心の高さをうかがうことができる時間となりました。

ミリム劇場側の様子
ジャック&ベティ側の様子

よこはま若葉町多文化映画祭-『マルモイ ことばあつめ』をめぐる交流

また 12月2日には、「シネマジャック&ベティ」で開催された「よこはま若葉町多文化映画祭2020」の一環として、『マルモイ ことばあつめ』上映後に、「韓国仁川「ミリム劇場」観客によるリモートトーク」と「ミリム劇場観客との日韓交流会」が開催されました。「ミリム劇場観客によるリモートトーク」では、2019年にこの映画が韓国で上映されたときに鑑賞した方々の感想を日本語に通訳してお伝えしました。

その中の一人、ミリム劇場のチェ・ウンヨン・マネージャーの感想を紹介します。

…「マルモイ」を見たきっかけは、ユ·へジンという俳優が出ているからです。明朗で愉快な雰囲気のユ·ヘジン。映画についての事前知識なしに映画館を訪れました。ハングルを知らなかったパンスが、偶然、朝鮮語学会という場所に足を踏み入れ、ハングルを学びながら韓国語の大切さを学ぶ。それは、パンスの人生の中で温かさを感じられる時間になりました。日本の監視を避けて全国八道の方言を収集する場面が印象的で、母国語が収められた辞書を守るために命を失った主人公·パンスの熱演に涙を流しつつ韓国語を守ってくださった先人たちに深い敬意を感じました。また、きょう、『マルモイ』という映画を一緒に楽しんでくださった「ジャック&ベティ」映画館の観客の皆様にも感謝いたします。

このような日帝時代の映画を通しての交流も、また意味深い時間となりました。

「ミリム劇場」には、20~70代まで幅広い年代の方が参加され、「シネマジャック&ベティ」の観客も、やはり幅広い層だったように思われました。日韓でのこのような映画を通しての交流は難しい面も多いのではないかと思われましたが、日本では、コロナ渦であっても、この映画への関心が高く、北海道から沖縄まで、全国の映画館で上映されたと聞きました。この日の参加者からは、日韓の関係において難しさはあっても、市民レベルで日韓の歴史について学ぶ機会が重要だと映画を通して感じたという声が上がっていました。

「よこはま若葉町多文化映画祭2020」の主催者で企画を担当しているART LAB OVAの影山ヅル代表も、今後もこのような日韓の歴史を学ぶ趣旨で、両国の教科書を比較して討論する企画なども検討したいと話されました。

12月最後の日韓リモートトークは、12月19日に大阪の「シネ・ヌーヴォ」で開催された「仁川インディペンデントフィルムツアー」で、「ミリム劇場」と結んで行われた監督らとのGVになりました。やはりこの日も、日韓相互のインディペンデントフィルムへの関心、日本の観客の韓国社会への関心、韓国の監督たちの日本のミニシアターへの関心を垣間見ることができる交流の時間となりました。

様々な不安を抱えつつも、コロナ渦という危機を機会として取り組むことになった“日韓リモート交流”。今後も日韓の交流の新たな可能性として展開されることを期待しています。


山田貴子(やまだたかこ)

埼玉県・所沢市出身。98年末より大韓民国仁川広域市在住。2011年、ソウル国際女性映画祭・移住女性映画制作ワークショップに参加したきっかけで映画制作および教育事業、プログラミングに関わる。 2012年、文化観光部・韓国文化芸術教育振興院(ARTE)にて仁川地域通信員委任後、2013年より「ソウル国際女性映画祭・多文化映画祭」「ソウル移住民文化芸術祭」「MWFF移住民映画祭」などのプログラマーを兼任。