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2023年 映画館での上映―公開本数・公開作品
「映画上映活動年鑑2023」

ARTICLES
2024年5月29日

この記事は、2024年3月発行「映画上映活動年鑑2023」より抜粋です。
一部のページはResearch & Reports にてPDFデータを公開しています。

映画上映活動年鑑2023
A4変形/ 196ページ/2024年3月刊行 文化庁「令和5年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
 
I 映画館での上映 … 今回はこちらを掲載
概況|公開本数・公開作品|諸外国との比較|都道府県別概況|全国映画館リスト2023
Ⅱ 公共上映
Ⅲ 特集1|コロナ後のコミュニティシネマ
Ⅳ 特集2|フィルム上映の現状を考える―採録:日韓映写技師ミーティングin福岡
Ⅴ 都道府県別上映施設一覧
Ⅵ 上映に関わる用語


映画館での上映

公開本数・公開作品

公開作品

映画の公開本数は、1955年以降2004年までは大体550-650本を推移してきたが、デジタル化の進行とともに増加し続け、2013年には日本映画、外国映画とも500本以上が公開され、公開本数は1000本を越えた。2019年、公開本数は1278本に達し、コロナ禍の2020年も1017本が公開され、2021年は1000本をわずかに割り込んだものの、2022年には再び増加に転じ、1143本公開、2023年はコロナ前の2019年とほぼ同水準の1232本が公開されている(映連発表数値)。日本映画の公開本数は676本、外国映画は556本となり、コロナ以前の水準に戻っている。

興行収入

2023年の興行収入は、日本映画が1481億8100万円(前年比101.1%)、外国映画が733億100万円(前年比110.2%)、合計2214億8200万円で、前年を3.9%上回っている。

非常に好調だった2019年の2611億8000万円には及ばないものの2018年(2225億1100万円)とほぼ同水準となっており、10年前の2014年(2070億3400万円)を大きく上回っている。日本映画製作者連盟は、2024年1月末の「映画産業統計」の発表会見において「ほぼ新型コロナウイルス禍前の水準に戻った」としている。

日本映画と外国映画の興収の割合は、日本映画66.9%に対して外国映画33.1%で、依然として外国映画のシェアの低迷が続いている。2018-2019年は外国映画のシェアは45%以上であった。

公開規模

コミュニティシネマセンターではネット上に掲載された情報等を元に独自に「公開作品」リストを作成している。2023年の公開本数は日本映画656本、外国映画634本、合計1290本(都内1-2館特集上映のみでの公開作品を含めると1465本)という数値を得ている。映連発表の数値は、日本映画676本、外国映画556本、計1230本(ODSを加えると1431本)となっている。多少の齟齬があるが、以下では、こちらで得たデータを元に公開作品の中味を見てみる。

公開規模

「300館以上」の映画館で公開されたのは、日本映画59本、外国映画30本となっている。

日本映画では、興行収入が100億円を越えた『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年12月)、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(4月)や、『君たちはどう生きるか』(7月)、『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』(3月)、『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』(2月)と12月に公開された『劇場版SPY×FAMILY CODE: White』のアニメーション6作品と、劇映画でアカデミー賞視覚効果賞、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『ゴジラ−1.0』(11月)、それに人気シリーズで大ヒットした『キングダム 運命の炎』(7月)、『レジェンド&バタフライ』(1月)、『シン・仮面ライダー』(3月)、『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』(11月)が370館以上の大規模公開となっている。

このほか、劇映画では、『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』、『ミステリと言う勿れ』といったテレビドラマの映画化作品が360館を越える映画館で公開され40億円を越えるヒットを記録している。また、カンヌ国際映画祭で受賞した是枝裕和監督『怪物』や、北野武監督6年ぶりの新作『首』、東京国際映画祭オープニングを飾った『ラーゲリより愛を込めて』(2022年12月)なども300館以上で公開され、多くの観客を集めている。

アニメーションでは、幅広い客層をターゲットにした『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(11月)、『かがみの孤城』(2022年12月)、『BLUE GIANT』(2月)『映画 窓ぎわのトットちゃん』(11月)なども多くの映画館で公開されている。

外国映画では、4月に公開された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が140.2億円の大ヒットとなった。また、昨年の『トップガン・マーヴェリック』に続き、トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』が380を越える映画館で公開され、映画館離れが懸念される中高年層を含む幅広い客層を集めて54.3億円の大ヒットとなった。『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(5月)、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(6月)、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(9月)といった人気シリーズの最新作が公開されて話題をよんだ。また、『リトル・マーメイド』(6月)の実写版やアニメーション『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』も多くの観客を集めた。

2020年以降、シネコンはそれまで上映しなかった多様な作品を上映するようになった。また、コロナ以前の2019年までは150館以上で大規模公開される作品のほとんどは「シネコンのみ」で上映されていたが、2021年以降はシネコン以外の映画館、ミニシアターでも上映されることが増えている。つまり、コロナ禍以降の傾向として、シネマコンプレックスとミニシアターの両方で公開される作品が増えたということがある。シネコンとミニシアターの両方で公開される作品は、2019年は日本映画で104本(18%)、外国映画では125本(24%)だったが、2023年は日本映画で208本(32%)、外国映画は302本(48%)と倍増している。シネコンの上映作品の多様化が進んだ一方で、ミニシアターではシネコンでの公開から多少遅れても集客が見込める話題作を上映するようになり、上映作品の明確な線引きはなくなりつつある。

そのような状況でも、ミニシアターでしか上映されない作品のパーセンテージはあまり変化していない。「49館以下」の小規模公開作品は日本映画で431本、外国映画でも431本である。これらの作品のうち、日本映画で268本、外国映画で222本、計490本(38%)がミニシアターのみでの公開となっている。

ミニシアターでしか上映されない小規模作品の中には、国際映画祭等で高い評価を得た作品や、世界的巨匠の作品、重要なドキュメンタリー映画、多くの若い作り手たちの野心的な作品が含まれている。また、2021-2022年に行われた文化庁の「ARTS for the future!」(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)による支援を受けて制作された数多くの作品が含まれている。(2022-2023年の日本映画の公開本数が538本から656本と100本以上増えている背景にはAFFによる支援により多数の作品が制作されたことがあると推測される)後述する旧作のデジタルリマスター版のリバイバル上映や監督の特集上映なども、そのほとんどが、ミニシアターのみで上映されている。

公開作品の種類

2023年の日本映画の公開本数は656本となり、コロナ前の2019年(577本)を上回っている。その内訳をみると、劇映画の新作が384本(26増)、アニメーション新作が93本(8増)、ドキュメンタリー映画が84本(7増)、公演やライブ等のODSが18本、特集上映(旧作のデジタルリマスター版含む)が72本となっている。

前述のように、2023年もアニメーション(『THE FIRST SLAM DUNK』、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』『君たちはどう生きるか』等)が圧倒的な集客力を見せつける結果となっている。アニメーションは93本が公開され、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「鬼滅の刃」「プリキュア」「スすみっコぐらし」といった人気シリーズは大規模公開され、多くの観客を集めている。また、近年では、幅広い年齢層をターゲットとする『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』、『かがみの孤城』、『BLUE GIANT』、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』、『アリスとテレスのまぼろし工場』のような作品も数多く公開され、着実に観客を集めている。こういった長編のアニメーションを対象とする映画祭「新潟国際アニメーション映画祭」が2023年に始まり、注目を集めている。また、2023年は「機動戦士ガンダムSPEEDスペシャルエディション」シリーズ4作品が上映されたことも話題を集めた。

劇映画では、前述の大規模公開作品に加え、『福田村事件』(9月)、『月』(10月)、内外の映画祭で高い評価を受けた『せかいのおきく』(4月)、『ほかげ』(8月)、『ケイコ目を澄ませて』(2022年12月)などが、ミニシアター、シネコンの両方で上映され、多くの観客を集めた。『茶飲友達』『バカ塗りの娘』『エゴイスト』『市子』『遠いところ』『さよなら ほやマン』等々といった若い作り手の作品も注目されている。

384本の劇映画の中、60%以上を占める249本が49館以下の小規模公開作品であり、そのほとんどがミニシアターのみで上映されている。

2022年も多くのドキュメンタリー映画が劇場公開された。公開された84作品のうち、63作品がミニシアターのみで上映されている。他方、全国30館以上での公開となった作品も20本に上り、シネマコンプレックスで上映される作品も増えており、映画館でのドキュメンタリー映画の上映が定着していることをうかがわせる。

日本映画の旧作の特集上映(デジタルリマスター版による)も増えており、2023年は8企画72本が上映された。「私立探偵濱マイク三部作」や、鈴木清順監督「浪漫三部作」を上映する「SEIJUN RETURNSin4K」は多くの映画館で上映された。

外国映画は、2023年は634本が公開され、公開本数はコロナ前の2019年(514本)を大きく上回っている。内訳は、劇映画の新作が304本、アニメーションの新作が25本、ドキュメンタリー映画55本、ODS53本、旧作デジタルリマスター版のリバイバル公開が43本、旧作の特集上映が26企画(154本)となっている。旧作のデジタルリマスター版では『タイタニック』(ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター)が200館を越える映画館で公開され、10億円を越える興行収入を上げている。

2022年に続き、2023年も旧作の特集上映が盛り上がった。2022年の22企画を上回る26企画で154本もの映画が上映されている。

主な特集を挙げてみる。

2023年の主な特集上映
午前十時の映画祭 『アラビアのロレンス完全版』ほか
12ヶ月のシネマリレー 『ラストエンペラー4Kレストア版』ほか
BOND60 007 4Kレストア 10作品 
インアファナル・アフェア 4K 三部作
ワールド・ブルース・リー・クラシック2023(5作品)
追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭(9作品)
オタール・イオセリアーニ映画祭 ジョージア、そしてパリ(21作品※短篇含)
シャンタル・アケルマン映画祭2023(5作品)
ジャン・ユスターシュ映画祭(4作品)
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選
ロバート・アルトマン傑作選
没後60年 ジャン・コクトー映画祭
イ・チャンドン レトロスペクティヴ4K(6作品)
ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023
ウルリケ・オッティンガー ベルリン三部作
メーサーロシュ・マールタ監督特集上映(5作品)
ジョン・カサヴェテスレトロスペクティヴリプリーズ(6作品)
再発見! フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅(5作品)
みんなのジャック・ロジェ(6作品※短篇含)

シネマコンプレックスを中心に上映される「午前十時の映画祭」が復活して、2023年は『アラビアのロレンス/完全版』『エクソシスト ディレクターズカット版』、『グリーンマイル』や『ジュラシック・パーク』『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』『ジュラシック・パーク III』といった超大作から『ミツバチのささやき』まで、多彩で魅力的な作品が67館で上映された。また、「BOND60 007 4Kレストア 10作品」は、シネマコンプレックスのみ約50館で、007シリーズ10作品が上映されている。 

東北新社配給(企画協力:東京テアトル、武蔵野興業)で全国に巡回されている「12ヶ月のシネマリレー」は、2023年に入って『ラスト・エンペラー』『薔薇の名前』『カラヴァッジオ』『マリリンとアインシュタイン』など80年代のヒット作を上映している。

昨年亡くなったJ=L.ゴダール監督を追悼する「追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭」や、イオセリアーニ監督の主要作品を一挙上映する「オタール・イオセリアーニ映画祭 ジョージア、そしてパリ」(イオセリアーニ監督も2023年12月に亡くなった)、久しぶりの上映となった「ジョン・カサヴェテスレトロスペクティヴリプリーズ」や「ジャン・ユスターシュ映画祭」、「みんなのジャック・ロジェ」、韓国映画の巨匠「イ・チャンドンレトロスペクティブ」等々…。実に多様な特集上映が次々に行われ、全国に巡回されている。旧作の特集上映が盛んに行われるという現象は、日本特有のものではなく、ヨーロッパでも同様であり、コロナ後の映画館で若い観客を拡大する一助ともなっているようである。

旧作のリマスター版のリバイバル公開も好調で、1930年代の作品から2000年代初頭のミニシアター系のヒット作まで、多彩な作品が公開され、映画ファンを集めている。

興行収入10億円を越える映画/10億円以下の映画

2023年、興行収入が10億円を越える映画は日本映画・外国映画合わせて49本(2022年41本、2021年37本、2019年65本)となった。本数では全公開本数1232本の4.0%、興行収入では、日本映画約980億円、外国映画483.3億円で合計1463.3億円となり、全興行収入の66.1%(2022年72%、2021年62.2%)を占めている。



続きは「映画上映活動年鑑2023」に掲載!
映画上映を、公開作品海外との比較からも詳しく分析しています。
また、続く章では全国の公共上映一覧もご紹介。
2つの特集「コロナ後のコミュニティシネマ」「フィルム上映の現状を考える」もあわせてお読みください!

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