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コロナ禍のフランスの映画館、映画界の状況

REPORTS
2021年3月29日

坂本安美(アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)

2020年12月16日の全国コミュニティシネマ会議で、2020年3月半ばから12月半ばまでのコロナ禍のフランスの映画界の状況を、限られた時間の中で、政府の対応、フランス各地の映画館の状況、そして映画監督、俳優たちの声、メディアの活動等々、できるだけ多くの視点、立場から、ご報告させて頂きました。以下は、そのときのプレゼンテーションの内容を多少編集、加筆したものです。

1)フランス政府の対応、映画館の閉館/再開の推移

2020年3月12日、ちょうどこの場所「ユーロライブ」で、アルテ・フランス・シネマのディレクター、オリヴィエ・ペール氏をお迎えして「第2回映画批評月間 フランス映画の現在」のオープニング上映イベントを開催していました。カンヌの監督週間、ロカルノ映画祭ディレクターを務めた後、フランスのみならず、世界中の才能溢れる作家たちを見出し、彼らの製作を支援するお仕事をされているペール氏から、現在の映画の状況、新たな才能の発掘、支援していくことの重要性についてお話をお聞きし、アルテの製作作品を紹介していただいていた、まさにその頃、ヨーロッパでは急速に新型コロナウイルスの感染が拡大していました。ペール氏は3月14日に帰国するはずが、便数が減らされて予定の便がキャンセルとなり、翌15日に、ほぼ無人の成田空港からなんとか帰国の途につかれました。

まず、2020年3月から12月までの状況をざっと見てみます

3月17日、ロックダウン、全国の映画館が閉館へ

3月17日にフランスはロックダウン(都市封鎖)となり、全国2045の映画館(6114スクリーン)が閉館を余儀なくされます。5月11日以降、ロックダウンは段階的に緩和され、商業施設の営業再開や政府許可証なしでの外出、近隣地域への移動が可能になります。幼稚園や小学校は11日に希望者の登校が許可され、12日からは一部が再開されました。

6月22日、映画館再開

6月22日、約3ヶ月ぶりに約9割の映画館が営業を再開しました。この日はフランス中の映画館、上映施設がお祝いムードに包まれ、パリ9区の独立系映画館「サンク・コーマルタン」では、時計の針が0時を回ったと同時に舞台挨拶付き先行上映会を実施、上映作品は『パリの調香師 しあわせの香りを探して』で、90人定員のところ117人が集まり、急遽2つ目のスクリーンをオープン、舞台挨拶に立った主演のエマニュエル・ドゥヴォス、グレゴリー・マーニュ監督も驚き、喜んでいたそうです。映画館再開に当たっては、マスク着用、座席制限など全国仏映画館連盟(FNCF)は6月初頭に詳細なガイドラインを作成していました。

しかし、営業再開から1ヶ月後、映画館の客足は思ったほど伸びず、2020年7月の動員数は約500万人程度で前年同月の約1800万人の3分の1以下となりました。大手映画館チェーンのパテ・ゴーモン社代表のオレリアン・ボスク氏はラジオのインタビューで、「長らく閉まっていた映画館への渇望があって常連客は戻ったが、たまに映画を見るくらいの観客はデリケート」「観客動員数は通常の25~30%。(会社としては)割に合わない」と語っていました。

そんな中、7月27日に、パリ2区の独立系映画館「グラン・レックス」が8月3日から3週間の休館を発表しました。1932年創業で、アール・デコ調の建築歴史的建造物にも指定されるこの映画館は、7スクリーンを持ち、最も大きなスクリーンの座席数は2702人です。8月はヴァカンスの時期でパリは閑散として、しかも新型コロナウイルスの影響で客足が落ち込んでいました。さらにアメリカ系のブロックバスター作品の新作が公開延期によりほとんどなかったことも大きな痛手になったようです。この映画館は『TENET』の公開にあわせて8月26日に再開しました。8月に休館した映画館は、確認できるだけで、パリで18館にものぼりました。

10月30日、ふたたびロックダウン、そして閉館

新型コロナの感染者数が1日3万人を越え、10月17日からパリのあるイル・ド・フランスを含め、フランスの9都市圏で、21時以降朝6時までの外出を禁止する夜間外出禁止令がしかれ、マクロン大統領は10月30日以降、2度目の都市封鎖を行うことを発表しました

これにより、飲食店をはじめ、映画館を含む文化・娯楽施設は再び閉館に追い込まれました。ようやく動員数も増え、リズムも取り戻していた矢先のことで、映画館、配給会社、観客、そして製作サイド、映画関係者のだれもが困惑し、落胆しました。

10月17日に夜間外出禁止令が出た時点で、すでに興行側は対応に追われました。最終上映の回は仕事帰りや夕食後に映画を見る人が多い枠なのですが、これをやめて、朝の上映を増やすなどして調整をはかっていたのです。しかも、10月23日には、文化大臣のロズリーヌ・バシュロ=ナルカン(2020年7月6日就任)が映画業界に対する30ミリオン・ユーロ(約37億円)の新たな援助を発表、そのときのスピーチで「映画館が閉まる事態を防ぎ、観客が映画館に通い続けることができるようにすることが我々の目的です。それにはまた、配給会社のみなさんがリスクを負って作品を公開していただくことも必要です」と語り、映画業界に希望を与えた矢先だっただけに、関係者のショックはさらに大きなものでした。

11月24日

マクロン大統領は演説を行い、第2波のピークは過ぎたとして、外出禁止令の成果を強調、11月28日以降の穏和を発表、自宅から20キロ、3時間までに制限が緩和され、店舗の営業再開が可能となり、映画館を含めた文化施設も12月15日から再開となるはずでした。感染数が一日5000人ほどまで抑えられたらという条件つきで。

12月10日、映画館再開延期

1日1万人台になったとはいえ、新型コロナの感染者数は当初の想定ほど減少していないため、フランスのカステックス首相は、12月15日に予定していた映画館や美術館などの営業再開を少なくとも来年1月7日まで延期すると発表しました。終日の外出制限は予定通り12月15日に終了しましたが、夜8時以降の外出は引き続き禁止となりました。また、大みそかの夜間外出制限解除措置は見送り、クリスマスイブのみ例外とされました。

2)フランス各地の映画館の状況

次に、フランス各地のアート系映画館がコロナ禍の中、どのように対応してきたかを見てみます。各劇場には以下の質問を送付しました。

  1. 最初のロックダウンの際の公的支援
  2. 閉館中、劇場を維持していくためにどのような試みを行いましたか。 
  3. 6月の再開後の状況
  4. 二度目のロックダウンの際の公的支援
  5. 再開後に予定されているプログラム
  6. 映画館の役割は、今後変化していくと思いますか。コロナ禍後、新たな試み、新たなプログラミングを行うべきだと考えますか。

シネマ・ル・ルクソール(パリ)

2013年設立/スクリーン数:3/座席数:541

パリ18区のバルベス・ロシュシュアールにある同映画館は、エジプト様式のアール・デコ建築で1921年開館。1983年に一度閉館し、ナイトクラブとなるも経営が上手くいかず、ほとんど廃墟のようになっていたのを、パリ市が買い取り、2500万ユーロかけて美しい映画館に復元した。第1ホールにはエジプトの映画監督ユーセフ・シャヒーン、第2ホールは女優、監督のジュリエット・ベルトの名前が付けられている。

  1. 最も重要な支援となったのは、「一時的失業制度(chômage partie、日本の雇用調整助成金制度に相当)」措置によって社員の給与額に相当する額の補償金を受け取ることができたこと。
  2. 配信サービスなどは劇場の役割ではないので行っていない。
  3. 7月・8月(座席稼動率50%)の入場者数は、フランソワ・オゾンの『85年夏(仮題)』以外はかなり低かったが、10月には前年の同時期とほぼ同じぐらいに戻っていた。
  4. 一時的失業制度、CNCの援助(一年間の支援金に相当する援助)、およびパリ市、イル・ド・フランスからの援助を受ける。
  5. 再開したら10月に中断した公開作品を引き続き上映する予定。
  6. 映画館はこれからも映画を発見するために必要不可欠な場所であり続けると信じている。

コモエディア(リヨン)

2006年設立/スクリーン数:9/座席数:1163

1914年開館、現在の名前になったのは2006年。作品選びを大切にしていて、閉館中も会員たちにニュースレターやヴァーチャル映画館サイトで作品を紹介し続けている。

  1. 「一時的失業制度」措置による補償を受けた。
  2. 週刊ニュースレターを会員に送付。「25時 (la 25ème heure)」というヴァーチャル映画館サイトとコラボして映画を紹介し続けた。
  3. 45%まで入場数が減少する事態となったが、夜間の上映禁止(最終回18時)発令中も『Adieu les cons』(アルベール・デュポンテル)や『Drunk』などの作品によってかなりいい成績を記録していた。
  4. 「一時的失業制度」措置による補償を受けたほか、CNC、およびリヨン市から特別援助を受け、興行停止による損失の補填に充てた。
  5. 『Mandibules』や『Le people Loup』など閉館時にかかっていた新作から再開する。
  6. コモエディアは今後もアート系劇場としてトークイベントなど観客への作品紹介を大切にしてプログラムを続けていく。

シネマ・ユトピア(ボルドー/モンペリエ/アヴィニオン/サン=トゥアン)

ユトピア・サン=シメオン(ボルドー)1999年設立/スクリーン数:5/座席数:555

ユトピア・サン=ベルナデット(モンペリエ)2007年設立/スクリーン数:3/座席数:256

ユトピア(アヴィニオン)1976年設立/スクリーン数:5/座席数:595

ユトピア(サン=トゥアン)1987年設立/スクリーン数:6/座席数:782

ヌーヴェル=アキテーヌ県のアート系映画館チェーン。教会などをリノベーションした映画館でレストランやバーも併設。ポーランド映画祭、フィルム・ノワール映画祭、上映後の討論会やイベントも積極的に開催している。

  1. 「一時的失業制度」措置による補償を受け、社員への給与はほぼ100%支給。2月の税の免除。7月、8月分のアート系映画館向け支援金の早期振込。
  2. サイトやFacebookを通じて劇場に来る観客たちと連絡を取り続けた(クイズ、日誌、VODで作品を配信)。
  3. 時期にもよるが前年比で50~75%の入場者数で、二回目の閉館直前にはだいたい75%となっていた。
  4. ヌーヴェル=アキテーヌ県が「アート系」と指定される劇場に対して例外的な支援を行った。
  5. 最初の2週間は閉館前にかかっていた作品を再びかける予定。これまで同様様々な上映イベントを企画していた。エンニオ・モリコーネ追悼上映と講演会など。しかし21時以降の夜間外出禁止令によって開催が困難に。
  6. 映画館の役割が変わるとは思わない。多くの人と共に映画を見る体験をシェアしたい観客によい作品を届けていくこと、いいプログラミング、セレクションを行うことが重要だと思っている。

シネマ・ジャン・ユスターシュ(ペサック) 

1983年設立/スクリーン数:5/座席数:751

映画作家ジャン・ユスターシュの故郷ペサックにある映画館。

  1. 「一時的失業制度」措置による補償を受け、休業手当の支払いなどを行った。
  2. 配信サイト「ラ・トワル(La Toile)」の協力のもと作品を紹介し続けた。
  3. 約60%の観客が戻ってきた。
  4. 12月15日の再開は厳しいかもしれないが、再開したら10月に中断していた公開作品を引き続き上映する予定。
  5. 12月15日の再開に向け、AFCAE(フランスアート系映画館協会)はフランス全土の150館の映画館でサプライズ・プレミア上映を準備、カルチャー週刊雑誌「テレラマ」と共催の映画祭開催を予定していた。
  6. 映画館は上映イベントなど、これまでの以上にイニシアティヴを取り、ライブとオンラインの両方で観客たちとの出会いを作り出していく必要がある。

表:CNC発表による 2020年フランス映画動員数の推移

2020年 2019年 前年比(%)
1月 14,670,000 18,320,000 -19,9
2月 17,580,000 21,960,000 -20,0
3月 6,010,000 18,750,000 -67,0
4月 18,050,000
5月 15,440,000
6月 1,110,000 12,480,000 -91,1
7月 4,790,000 18,260,000 -73,8
8月 6,680,000 16,120,000 -58,6
9月 5,550,000 11,220,000 -50,5
10月 8,520,000 19,910,000 -57,2
1月~10月 64,900,000 170,510,000 – 61,9

)映画人ほか、著名人たちによる働きかけ

映画館の経営者の方々の声を聞くと、さすが文化・芸術の国フランス、政府の支援も、日本に比べるとかなり手厚いことが感じられるかと思います。実際、国立映画センター(CNC)は、ロックダウン直後、3月18日に第一次緊急支援策として2200万ユーロ(約26億円)の拠出を決定しています。具体案としては、まず、税金納入期限の延期(入場料収入の10%のチケット税)があります。翌19日にはミュニエル・ペリコ労働大臣と当時のフランク・リステール文化大臣が文化セクターで働く不定期、定期雇用者への「例外的支援」を発表します。フランスには舞台芸術・映画のフリーランス労働者が失業手当を受給できる制度「アンテルミタン・デュ・スペクタクル」があり、年間507時間働くと仕事のない時も手当が享受できるしくみになっています。現在この制度を享受する労働者は約12万2000人。外出禁止令の期間はその日数の計算に入れず、外出禁止令が解かれるまで、通常支払われている生活手当が支払われることとなりました。また企業向け支援策も同日、ブリュノ・ル・メール経済・財務大臣から発表され、銀行への融資の保証などが約束されました。

アーティストたちによる大統領に宛てた公開書簡

しかし、芸術が生命にとって不可欠(エッセンシャル)なものであるという共通認識があり、それに携わる人たち、あるいはそれを味わうことを生活の一部としている人々にとっては、政府の対応は具体性に欠ける不十分なものでした。支援策から漏れてしまう人たちも多く、ロックダウンによって、職を失い、生活保護を受ける人たちが後を立たない状況となります。エドワール・フィリップ首相による5月11日以降の段階的ロックダウン穏和の発表の際、文化セクターについての発言が一切なかったことへの怒り、落胆、驚きもあり、著名人たちが立ち上がり、大統領向けの公開書簡を、4月30日、フランスで最大手の日刊紙「ル・モンド」に発表しました。イニシアティヴを取ったのは女優で監督のジャンヌ・バリバール。カトリーヌ・ドヌーヴ、オマール・シイ、ジャン・デュジャルダン、マチュー・アマルリックら200人が名を連ねています。

大統領、芸術と文化についてのこの怠慢を償って下さい!

文化セクターには約130万人の人々が働いています。ロックダウン以来6週間経ちますが、フランク・リステール文化大臣は何も発言していません。「わかりません」の連続で、民間の劇場について何か一言、二言述べたぐらいです。Covid-19のリスクの保証をする保険業者向けのあいまいな奨励としか聞こえてきません。結果、私たちは日々の生活費をなんとか工面しながら生きている状況です。これから3ヶ月、アンテルミトン、フリーランスの労働者たちはどのように食べものを買うお金を工面すればよいのでしょう。このシステムの恩恵に属していない「(所得申告している)アーティスト、作家たち」はどうすればいいのでしょう。あなた方が忘却のかなたに追いやっている人々、私たち同様に、不定期、臨時雇用で、文化イベントに関わる仕事をしている人々、たとえば、レストラン、ホテル、清掃業、商店で働く人々はどうすればいいのでしょう。現時点では、いつ劇場やコンサートホール、美術館、映画館が再開するのかもわかりません。撮影もリハーサルもいつ再開することになるか。

文化大臣、この悲惨な現状を認識して、今後、人々や組織、機構が再び、このような状況に陥ることなく、活動を再開できるよう救済策を打ち出すように命じてください。

フランス政府、文化芸術分野の支援策発表

5月6日、この公開書簡に背中を押される形で、文化芸術分野について、政府が支援策を発表しました。まず、マクロン大統領はフランク・リステール文化大臣とともに、文化芸術分野のプロたちとビデオ会議の場を設け、映画監督のエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ、女優のサンドリーヌ・キベルラン、作家のオレリアン・ベランジェ、劇場ディレクターのスタニスラス・ノルデ、ラップ歌手のアブデル・マリックら、音楽、映画、演劇、ダンス、本などの分野で活躍する12人と意見交換をしています。その後、大統領は国民に向け、以下の支援策を提案しました。

  • 「アンテルミタン・デュ・スペクタクル」制度への特別措置(2021年8月末まで失業保険の保証期間を延長)
  • 撮影に対する「臨時補償基金」創設
  • 芸術分野に従事する若者へ政府関連の仕事の発注(主に30歳未満の芸術関係者に向け、芸術関係の大規模なプログラムを発注)
  • 外国のSVODプラットフォームに対するフランス及びヨーロッパの映像作品への出資の義務化(自宅待機中に視聴者を増やしたネットフリックス、ディズニー+、Amazonプライム・ビデオ、アップルTVら外国のSVODプラットフォームに対し、フランスおよびヨーロッパの映像作品への出資を義務化させる)

二通目の公開書簡 「人間として恥ずべき行為、品性が劣る行為です!」

しかしこうした支援策に対しても、やはり具体策、迅速な対応が欠けているとして、すぐさま、バリバールたちは、今度は日刊紙「リベラシオン」に二通目の公開書簡を発表、文化関係の800人以上の著名人が署名しました。

人間として、社会としての緊急課題を訴えているのに、それが真剣に考慮されていません。アンテルミトンとして登録されているアーティスト、技術関係者、アンテルミトンではないインディペンデントのアーティストたち、さらに深刻なのは、私たちのそばで、短い契約で働いているすべての人たちです。

文化の世界で彼らは「見えない人々」であり、アンテルミトンの人たちとは異なり、失業保険も受けられずにいます。季節労働者、臨時労働者として働く人々です。すでにRSA貧困所帯手当てを頼って生きる状況に追い込まれている人たちもいます。彼らの救済がもっとも緊急です。労働大臣、ただちに措置をおとり下さい。

8週間ちかく、この沈黙を聞いてきました。彼らの状況を否定するその沈黙を。

私たちが本屋で本にサインをするとき、展覧会を開くとき、町や村で映画の撮影をするとき、映画祭に参加するとき、ある町からもうひとつの町へと芝居の巡業をするとき、ギターを、ヴァイオリン、マイクを手にするとき、ダンスの靴を手にするとき、楽屋に、公演のあとにあるいは一杯ひっかけるバーに入るとき、学校や病院や刑務所のアトリエ(ワークショップ)に出向くとき、そうして町から町へ旅をしていくときに、そうしたクリエーションの瞬間、自分たちの作品、演しものの発表に関わり、それを分かち合っている何千もの人々‥。あなた方政府は、彼らを考慮することを拒否し続けています。

このおそろしい、大変な時期に困難な境遇に彼らを打ち捨てることは、恥ずべき行為、品性が劣ると考えます。文化の保護は彼らを保護することなしには考えられません。

監督協会から政府への公開書簡「軽蔑」

カステックス首相により、12月10日に映画館ほか文化施設の再開延期が発表されたのをうけて、監督協会は翌日、政府への公開書簡「軽蔑」を同協会のサイトに掲載しました。

どのような基準のもとにあなた方はひとつの業界で働く人々たち、その経済を長期にわたり弱体化させ、さらに損害を与え続けているのですか。

どのような基準のもとに美術品を売る画廊を訪れることは許されるのに、美術館やアート・センターは危険な場所だとみなされているのでしょう。

映画監督のギヨーム・ブラックは「私たちに必要なのは、数ヶ月単位の支援策ではない。政府が提案しているいくつかの政策は扇動的ともいえるものだ。この危機の時期を無駄にすることなく、利用して、フランス映画のシステム全体を改正すべきだ。」とある雑誌が行ったインタビューで述べています。

)2021年3月 現在の状況

フランスでは、感染状況が改善されないこともあり、現在も、18時以降の外出禁止令がしかれています。しかし商業施設はオープンしている中で、なぜ映画館、美術館、劇場などの文化施設がいまだに再開できず、活動停止を余儀なくされているのか、アーティストほか文化セクターで働く人たちは、2021年3月に入っても状況が変わらないことに怒りを露にし、それぞれ抗議運動を起こしています。3月12~14日には、政府の閉館命令に反し、フランス各地の20館の映画館が開けることを決定、フランス独立系映画配給会社(ACID)とフランス映画芸術連(GNCR)がこのイニシアティヴを支援し、声明「20館のマニフェスト」に署名をしました。その中にはマチュー・アマルリック、ジュリエット・ビノシュ、ギャスパー・ウリエルら著名アーティストの名前もあります。

以下にその声明を訳出し、彼らの切実なる思い、確かな声をお伝えし、この報告を締めくくらせていただきます。

一年前は、これしかなかったのかもしれません。
夏になると、映画館は再開され、観客の健康に何よりも気を配りました。この再会は美しく、感動的でした。映画館に行くことがどんなに恋しかったか。
しかし、その後、外出禁止令が出て、映画館はまた、閉鎖され、再開の可能性もありましたが、結局再開されませんでした。私たちは理解できませんでした。文化の場、特に映画館は感染の温床ではないという、科学的に確立された確かな事実を、自らの公式声明で認めながら、再開を認めない政府の判断が理解できませんでした。
この数ヶ月間、私たちは期待と不安の中で生活してきました。陰鬱さが増し、政府からの指示の不条理さが明らかになる一方で、私たちは散り散りにされ、微かにつながりながら、また、孤独へ送り返されています。共にあること、さよなら、悲しみよ、こんにちは。
この週末、私たちはこのような状況を断ち切り、あえてシンプルに、自分たちの仕事をすることにしました。映画館を開き、人々を迎え入れ、映画を上映しました。そうすることで、文化へのアクセスは、この集団的混乱の時代にあっても、保証されるべきであることを示しました。
十分に検証された感染予防対策を遵守して観客を迎え入れることができること、そして、芸術や文化を奪われたすべての子どもたちのクラスを迎え入れ、芸術教育に参加し続けることと同じ真剣さを持っていることを示したのです。
私たちは責任を負い、誇りを持って、一般の利益を守る使命を引き受けました。日々、絶え間なく流れてくるイメージや徴候に追いつめられる現在、映画の上映は我々にやすらぎと内省のとき、現実の騒動を距離を置いてみる時間を与えてくれます。それは、私たちを目覚めさせ、新しい認識へと導いてくれます。映画館が提供する共通の体験は、民主主義的体験であり、それを守るのは私たちの責任です。
それが私たちのやってきたことです。それ以上でもそれ以下でもありません。
私たちは、映画館閉鎖という悲しい記念日を、沈滞モードに抗して、みんなで一緒にいる喜びを感じられる集団的な祭典にするために、映画館をオープンしました。映画館を開けることで、突破口を開いたという希望と野心を持っています。私たちは、文化施設を本来の場所に戻す必要があることを確認しました。
私たちは抵抗し、継続していきます。

https://www.lacid.org/fr/magazine/le-manifeste-des-20-pour-l-ouverture-des-salles-de-cinema-2760

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