映画館での上映―(3)諸外国との比較[2024]
「映画上映活動年鑑2025」
この記事は、2026年3月発行「映画上映活動年鑑2025」から抜粋したものです。
Research & Reportsより全文をお読みいただけます。
「映画上映活動年鑑2025」
Ⅰ. 映画館での上映
―(3)諸外国との比較[2024]
2026年2月の時点では、まだ、諸外国の2025年のデータはインターネット上に公開されていなかったため、以下では、2024年の日本と諸外国のデータを比較している。
観客数
2020~2022年、世界中の映画産業がコロナ禍で大きな打撃を受けた。終息の時期は国によって異なるが、日本では2022年にはすでに映画館の観客数が回復する兆しが見られ、2023年の観客数は1億5553万5000人と、コロナ前(2014年)の97%まで回復した。
2024年の観客数はやや減少したが、1億4444万1000人で2015年の87%、他国と比較すると順調に回復しているように見える(2025年は歴代最高の興行収入となった)。諸外国の2024年の観客数をみると、フランスが2015年比88%、中国80%、イギリス74%と、まずまず順調に回復しているが、アメリカ・カナダは58%、韓国57%、オーストラリア55%に留まり、回復に時間を要しているようである。
観客数を人口で割った国民1人当たりの年間鑑賞本数は、韓国が2.4本(←4.3)、アメリカ・カナダ2.0本(←3.7)、フランス2.6本(←3.2)、オーストラリア1.8本(←3.8)、イギリスは1.8本(←2.6)と、( )内の10年前の数値からかなり下がったままである。一方、日本の年間鑑賞本数は、2021年0.9本、2022年1.2本、2023年1.3本、2024年は1.2本と順調に回復、さらに2025年にはコロナ前を上回る1.5本となっている。とはいえ、他国に比べると元々年間鑑賞本数が少なく、ドイツ、中国と最下位を争っている。

映画館数・スクリーン数
いずれの国も、シネマコンプレックスの増加を背景に2019年までは、スクリーン数は増加を続けていた。コロナ禍の2020年に減少に転じ(フランスと日本は微増、中国は増加)、さらに影響が広がることが懸念されたが、2021年以降は多くの国が微増に転じ、2024年も極端な変化はみられない。10年前と比較するとアメリカ・カナダを除くすべての国でスクリーン数は増加しており、特に、韓国では約1000スクリーン増加、中国では10年前の約3倍、9万スクリーンを越える激増となっている。コロナによる映画館への影響を抑えるべく、すべての国において、様々な形で映画館を守るための支援策がこうじられたことなどにより、コロナ禍による閉館は小規模なものにとどまったと考えられる。
2024年のスクリーン数は、中国が9万968スクリーンと群を抜いている。また、アメリカ・カナダが3万8592スクリーンと他の国に比べて圧倒的に多く、次いでフランスが6354、ドイツ4842、イギリス4682スクリーンと続く。
人口をスクリーン数で割った「1スクリーン当たりの人口」は、その数値が低いほどスクリーンが多く、身近にスクリーンが存在しているとみることができる。この数値をみると、日本は33,425人に1スクリーンと、他の国に比べてスクリーンが極端に少ない。アメリカ・カナダは9,883人に1スクリーン、フランスは10,789人に1スクリーンで、日本以外の7ヶ国はいずれも1スクリーン当たりの人口が1万人台、あるいはそれ以下におさまっており、日本のスクリーン数は、アメリカ・カナダやフランス、オーストラリアの3分の1、韓国、ドイツ、イギリス、中国の2分の1程度しかない状態が続いている。(スクリーン数のカウントの方法が、諸外国と日本で異なっている可能性もある)


興行収入・入場料金
各国の興収や入場料金については、『世界主要各国映画諸統計』および「Focus 2025」を基礎資料としており、この中で各国の興行収入等は米ドルで記載されている。fig24の注にあるように、本年鑑では米ドルをさらに当該年の為替レートで円に換算した数値を示している。現在のような形で「諸外国との比較」を行うようになって10年となるが、その間の為替レートは、2015年の時点では1米ドル=112円、2018年は1米ドル=110.7円、2019年は109円を採っており、2021年まで大きな変化はなく、年毎の変化をみる際に為替レートを意識することはあまりなかった。しかし、コロナ禍後、2022年には1米ドル=131円となり、2023年は1米ドル=140円、2024年は152円まで、急速に円安が進み、各国との比較を行うことは複雑な注意を要する状況となっている。
例えば、平均入場料金をみると、2019年、日本が1340円であったとき、アメリカ・カナダは992円、フランスは829円、ドイツやイギリスでも1000円程度で日本の入場料金の高さが目立っていたが、円安が進んだ2024年では日本が1433円であるのに対し、アメリカ・カナダは1721円、フランスは1220円、イギリスやドイツは1500円を越えている。ドルに換算すると、日本の入場料金は年々安くなっている。他国に比較して「高い」と言われ続けてきた日本の入場料金は、いまや欧米各国より安いものとなりつつある。

1スクリーン当たりの観客数・興行収入
1年間の観客数をスクリーン数で割った「1スクリーン当たりの観客数」をみると、いずれの国も10年前を下回っている。コロナの影響もあるが、いずれの国でもスクリーン数の増加に観客の増加が追いついていないことを示している。
2024年の1スクリーン当たりの1年間の興行収入をみると、日本は約5,581万円とトップの数値を示している。他の国に比較してスクリーン数が少ないため、自動的に1スクリーン当たりの観客数や興行収入は高くなるが、円安が進む中で、欧米各国との差は縮まりつつある。

シネマコンプレックスの割合
フランス、韓国とも、映画館数やスクリーン数に大きな変化はみられなかった。
シネコンの割合が高いのは韓国で、全3296スクリーン中3075スクリーン、93.3%をシネコンが占めている。日本のシネコンのシェアも3709スクリーン中3291スクリーン、88.7%と高い数値を示している。フランスは、シネコンの比率は44.8%にとどまっており、映画館数では、シネコン251館に対し、シネコン以外の映画館が1801館と、シネコンを大きく上回っている。(フランスはシネコンの定義を「8スクリーン以上」としており、他国が「5~7スクリーン以上」としていることと異なる)また、約1300館が多様な映画を上映する「アー・エ・エセイ映画館」(アートハウス、日本のミニシアターに近い)に認定されており、国や自治体から助成金を得ている。
フランスの映画館数は2052館と日本の594館の3倍以上であり、人口1~2万人の中小の市町村の73%に映画館があり、身近な場所で多様な映画を見ることができる環境が保持されている。

公開本数
コロナ禍で欧米各国の公開本数は激減したが、2023年以降は、各国ともコロナ前の2019年とほぼ変わらない数の作品を公開しており、1本当たりの観客数は10年前と比較するとかなり低い数値に留まっている。特に、公開本数が1344本と非常に多い韓国では1本当たりの観客数が91,615人と厳しい数値を示している。
日本では、「スクリーンクォーター制」のような特別な制度がなくても、自国映画/外国映画の割合は、コロナ禍前の2019年までは、公開本数、興行収入ともに大体5.5:4.5程度を保ち、他国に比べて非常にバランスの取れた状態となっていた。しかし、コロナ禍後の2020年、興行収入におけるシェアは、日本映画76%、外国映画24%となり、外国映画のシェアは大きく低下した。2024年も外国映画の低迷が続いている。

映画館に対する恒常的な支援制度
日本以外のいずれの国にも、映画産業と映画文化を統括し振興する組織(フランスのCNC、イギリスのBFI、ドイツのFFA、韓国のKOFICなど)があり、製作・配給・興行(上映)・教育・保存、放映や配信にいたるまで、映画に関わるあらゆることに関与している。上映活動についても、シネコンのような商業的な大規模映画館での上映から、多様な映画を上映するミニシアターやシネマテーク、自主上映まで、様々なレベル、種類の上映活動の状況を把握し、振興し支援する制度が確立している。
公的な支援、振興策には、単に金銭的な支援という以上の意味がある。公的な支援を受ける映画館には、公共的な文化施設として、地域コミュニティや文化団体との連携を重視したプログラム作りや若年層の観客開拓、映画教育プログラムなど多様な活動を行うこと、そのような活動を行うスタッフを育成することも求められる。そのことにより、地域における文化的な存在感、持続可能性も高くなる。また、多様な映画を上映する映画館の存在は、若手クリエイターの育成という意味でも非常に重要である。
ほとんど公的な支援を受けずに、140館をこえるミニシアターが、大都市のみならず中小都市にも存在する日本の状況は非常に貴重であり、諸外国から見ると「miracle(奇跡)」であり、敬意をもって見られている。コロナ後の観客数の順調な回復ぶりは驚異的だと認識されているようでもある。関係者の献身と犠牲によって成立してきた小規模な映画館の運営は健全とは言えず、未来に向けて持続可能でさらに豊かな上映環境を構築するために、映画振興策の見直し、映画館支援、上映者の実態に対応した助成プログラムの実現が待望されている。
映画上映活動年鑑2025
A4変形/ 192ページ/2026年3月刊行
委託:独立行政法人日本芸術文化振興会委託事業「令和7年度文化芸術活動の動向把握に向けた基礎資料収集事業」
*「Research & Reports」より全文をお読みいただけます。

I 映画館での上映
概況|公開本数・公開作品|➡諸外国との比較|都道府県別概況|全国映画館リスト2025
Ⅱ 公共上映
Ⅲ 特集|映画館(上映活動)の現状に関する詳細調査 兵庫県の2つの上映活動の詳細調査
Ⅳ 都道府県別上映施設一覧
Ⅴ 上映に関わる用語



