2025年 映画館での上映―(1)概況
「映画上映活動年鑑2025」
この記事は、2026年3月発行「映画上映活動年鑑2025」から抜粋したものです。
Research & Reportsより全文をお読みいただけます。
「映画上映活動年鑑2025」
Ⅰ. 映画館での上映
―(1)概況
日本映画製作者連盟(映連)の2025年「映画産業統計」(2026年1月発表)によると、2025年の観客数は1億8875万6000人で、前年(2024年)の130.7%、興収は2744億5200万円で前年比132.6%、興収の公開を開始した2000年以降、歴代最高を記録した。これらの数字からは、他の国が、未だコロナから十分に回復できていない中、日本の映画業界が目覚ましい回復ぶりを見せていることが感じられる。
日本映画の興行収入は2075億6900万円(前年比133.2%)で、前年2024年の1558億円を大きく上回り、歴代最高を更新した。一方、外国映画は668億8300万円で、依然としてコロナ前(2019年)の56%程度にとどまっている。とはいえ、前年を30%以上上回り、復調の兆しが見えてきた。日本映画と外国映画の興収のシェアは75.6:24.4で、コロナ以後、圧倒的に日本映画が強い状況が続いている。
2025年に注目されたのは、何といっても『国宝』である。興行収入では391.4億円をあげたアニメーション映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が圧倒的な強さを見せたが、『国宝』は徐々に公開館数を広げ、実写映画で歴代1位となる195.5億円を上げ、2026年に入っても上映が続いている。興収が10億円を超える作品は50本で、全興収の73.7%を占めている。(2024年62.9%)
映画館数・スクリーン数
2025年のスクリーン数は3739スクリーンで、前年から30スクリーン増加し、映画館数は597館で3館増加している。2016年から2025年の10年間では、館数は9館、スクリーン数は234スクリーン増加している。
シネマコンプレックス(シネコン)が24館265スクリーン増加し、「シネコン以外」の映画館は15館31スクリーン減少している。シネコンは3328スクリーンで、全スクリーンの89%を占めている。館数でも、2011年以降はシネコンが「シネコン以外」の館数を上回り、2025年はシネコン367館、シネコン以外230館、シネコンが61%となっている。
20年前、2005年の映画館数は806館であったが、その後10年間で200館以上減少、2016年には588館となっている。映画館のデジタル化が進められた2011~2013年の2年間で約80館減少したが、2025年の映画館数は597館で、この10年間は映画館数に大きな変化はみられなかった。
コロナ禍後、2020~2025年の5年間で閉館した映画館数はシネコンが18館(149スクリーン)、シネコン以外では約30館で、コロナの影響で特に閉館数が増えているという状況にはない。逆に、2020~2025年で29館のシネコンが開館、シネコン以外でも25館が開館(移転・再開は含まない)しており、これまでのところはコロナの影響は映画館の減少という形では現れていない。
観客数・入場料金
2025年の観客数は、1億8875万6000人、興行収入は2744億5200万円、いずれも前年を30%以上上回っている。実写映画歴代最高記録を更新した『国宝』に、アニメーションでは、400億円には届かなかったものの興収391.4億円の大ヒットとなった『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』、100億円を越えた『名探偵コナン隻眼の残像(フラッシュバック)』や『劇場版「チェンソーマンレゼ篇」が続き、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」といったシリーズなども好調で、10億円を越える作品は日本映画で38本、外国映画で12本、計50本に上った。(「2025年 映画館での上映―公開本数・公開作品」参照)
入場料金の平均は2020年以降、上昇を続け、2025年は1454円となった。2023年6月に大手のシネコンチェーンであるTOHOシネマズとTジョイが映画鑑賞料金を一般料金は2000円としたのに続き、他のシネコンでも一般料金2000円となり、シネコン以外の映画館でも、他の物価や光熱費の上昇に合わせる形で入場料金の値上げに踏み切る映画館が増えている。


種類別にみる映画館数・スクリーン数の変化
– シネマコンプレックス(シネコン)
シネコンは363館3328スクリーンで最も多く、全スクリーン数(3739)の89%を占めている。10年間で24館265スクリーン増加している。2000年代に入ってから2008年までは、毎年20~30館のペースでシネコンがつくられてきたが、2009年以降はそのスピードは緩やかになり、2014年以降、2021年までは年間5~10館が開館、コロナ後の2022年に開館した映画館は2館のみであったが、2024年は5館、2025年は「シネマサンシャイン三郷」(埼玉)、「イオンシネマ須坂」(長野)、「イオンシネマ土岐」(岐阜)、「シネマワールドららぽーと安城」(愛知)、「イオンシネマ松江」(島根)、「MOVIX広島駅」の6館が開館、2026年にも東京、名古屋、岩手県北上市などで開館が続く。
一方、2022年以降は、毎年1~3館が閉館している。2022年には「ディノスシネマズ旭川」(北海道)、「大津アレックスシネマ」(滋賀)、「イオンシネマ西大和」(奈良)、2023年には「フォーラム八戸」と「佐久アムシネマ」、2024年には「MOVIX三郷」(埼玉)が閉館している。2025年には「ユナイテッド・シネマ枚方」(大阪)、「ユナイテッド・シネマ熊本」、「イオンシネマ津」(三重)、「109シネマズ高崎」(群馬)の4館が閉館した。
– 既存興行館
既存興行館は58館128スクリーンとなり、10年間で、映画館数28館減、スクリーン数76スクリーン減となっている。2010~2014年、映画上映のデジタル化が進み、デジタルシネマ機の導入という大規模な設備投資に耐えられない既存興行館の閉館が続き、2010年に176館あった館数は5年間でほぼ半減、2020年には67館まで減少したが、現在は落ち着いた状況となっている。
既存興行館の中には、ミニシアター的なプログラム編成に変えてシネコンのプログラムとの差異化を図る映画館が増え、閉館した既存興行館が別の運営団体によって再開される例も増えている。また、「新しい」既存興行館の開館もあり(「シネマサンライズ日立」(茨城)、「大川シネマホール」(福岡)等)、従来の「シネマコンプレックス」「既存興行館」「ミニシアター/名画座」という分類で映画館の現状を把握することが難しくなっている。
– ミニシアター/名画座
ミニシアター/名画座は、147館252スクリーンで、この10年間で32館64スクリーン増加している。2022年以降、「ストレンジャー」(東京・墨田区)、「シモキタ-エキマエ-シネマ K2」(世田谷区)、島根県益田市の閉館した映画館を再開した「小野沢シネマ」、「キノシネマ神戸国際」(「神戸国際松竹」跡)、「キノシネマ新宿」(「EJアニメシアター」跡)、また、「扇町キネマ」(大阪)、「シネマ203」(和歌山)、「シネマポスト」(下関)、「キノシネマ心斎橋」(大阪)、「小田原シネマ館」(神奈川)、「金星シネマ」(静岡)といったミニシアターが開館し、2025年には、埼玉県さいたま市に2階以上にシェアハウスが入る新しい形の映画館「OttO」が開館、12月には東京・神保町に2スクリーンの「シネマリス」が開館した。大阪市には「シアターエミュ」、沖縄県那覇市では那覇空港内に短編を中心に上映プログラムを組む「ファミンチュシアター」が開館した。また、2012年に閉館した「テアトル徳山」が2025年「シネマ・ヌーヴェル」として生まれ変わった。
映画館とは異なる上映の場、あるいは新しい形の映画館ともよぶべき場も次々に生まれている。鳥取県湯梨浜町では元小学校の教室をリノベーションした「ジグシアター」が2021年7月から上映を始め(月10日間程度)、秋田市には古民家を改装した「アウトクロップシネマ」(2021)、岡山県真庭市には「ビクトリィシアター」(2022)、長野県伊那市には“宿泊可能な複合施設”「赤石商店」(月1週間程度)がつくられ、岩手県宮古市では蔵をリノベーションした「シネマ・デ・アエル」が2016年に上映を開始している。2026年にも「ル・シネマ・キャトル」(北海道・東川町、約20席)、「Yet Cinema Club」(福岡、約15席)、「シネマドア」(鳥取、20席)が開館する。このような、従来の「興行」とは異なる上映の場をつくる動きは、今後も増えていくものと思われる。
他方、2025年には「湯本駅前ミニシアター Kuramoto」(福島県いわき市)、「大須シネマ」(名古屋)、「刈谷日劇」(愛知県刈谷市)、2026年に入って「シネマカリテ」(新宿)、「シネ・リーブル池袋」が閉館、「サツゲキ」(札幌市)、「新世界国際劇場」(大阪)、「福山駅前シネマモード」(広島県福山市)が閉館を発表している。成人映画館は、25館31スクリーンとなり、10年間で半減している。
デジタルシネマ機の導入から10年を経て、映画館は新しい機材への更新、買換えの時期を迎えている。1台1000万円近い大規模な設備投資が必要であり、既存興行館やミニシアターのように小規模な映画館にとって、これをどう乗り切るかが喫緊の課題となっている。さらに、ミニシアターや既存館が入る建物や設備の老朽化も進んでおり、建て替えによって閉館を余儀なくされる映画館も出ている。
2025年、映画業界全体としては歴代最高の興行収入を記録したが、一定の作品に観客が集中する傾向が進み、業界全体の好況に乗り切れず、コロナの影響を脱しきれていない映画館も少なくない。コロナ後の2023年以降に経営状況が深刻化している映画館もあり、予断を許さない状況が続いている。

地方別にみる種類別映画館数・スクリーン数
2025年の全国の映画館数は597館で、10年間で9館増加している。
スクリーン数は3739スクリーンで234スクリーン増となっている。関東地方を除くすべての地方で人口は減少しているが、北海道・東北地方は8.3%減少、中国・四国地方は7.2%減少となっており、他の地方に比べて人口の減少率が高く、減少率上昇の速度も速い。映画館数・スクリーン数の増減は人口の増減に対応しており、スクリーン数の偏在、地域的不均衡が年ごとに進んでいる。
この10年間で映画館数が増えているのは関東地方と近畿地方、中国・四国地方、九州・沖縄地方で、九州・沖縄地方ではこの10年間で6館64スクリーン増加している。全人口、全映画館数に占める各地方のシェアを比較すると、中部地方と九州・沖縄地方が人口シェアに比べてスクリーンシェアが1%以上高い。この10年間でスクリーン数が減少したのは、北海道・東北地方で7館10スクリーンの減少となっている。
ほとんどの地域において「シネコン」は、映画館数、スクリーン数ともに増加しているが、北海道・東北地方では2館4スクリーン減となっている。この10年間では、関東地方が12館133スクリーン増、中部地方が5館41スクリーン増、九州・沖縄地方でも7館61スクリーン増と大幅に増加している。
「シネコン以外」の数値は、ほとんどの地方で館数、スクリーン数ともに減少しているが、「ミニシアター/名画座」はいずれの地方も10年前より増加している。この10年間で40館以上のミニシアター/名画座及び既存興行館が開館しており、東京・大阪・名古屋・京都・広島といった大都市以外でも、那珂市(あまや座)、青梅市(シネマネコ)、上越市(高田世界館)、上田市(上田映劇/トラゥム・ライゼ)、伊東市(金星シネマ)、丹波市(エビスシネマ)、益田市(小野沢シネマ)、下関市(シネマポスト)、唐津市(シアターエンヤ)、沖縄市(シアタードーナツ、シネプラザハウス1954)等々、20万人以下の中小市町村でのミニシアターの開館も続いている。
「既存興行館」はこの10年で、すべての地方で減少し、関東で10館27スクリーン減、中部地方は8館17スクリーン減、近畿地方4館16スクリーン減となっている。2025年には、東京「丸の内TOEI」、盛岡市「盛岡ピカデリー」、刈谷市「刈谷日劇」といった永年地域に親しまれてきた既存館が閉館している。
– 人口規模と映画館

全市町村1719のうち、映画館があるのは306市町村18%にとどまっている。80%以上の1413市町村には映画館が存在せず、人口5万人未満の市町村の95%、1161の市町村には映画館が1館もない。映画館の空白地域が拡大している。これは、当たり前のことと思われるかもしれないが、文化を享受する権利において地域格差が生じていること、取りわけ、子どもたちの映画体験に大きな格差が生じるという点では大きな問題である。一方で、前述のように、中小都市において、新たに小規模映画館や定期的な上映の場をつくろうとする動きが増えている。これは、興行収入や観客動員数といった経済原理だけでははかることのできない、地域における上映活動の重要性を示す証左であると考えられる。このような上映活動を支えるためにも実態に対応した支援プログラムの実現が求められる。

映画上映活動年鑑2025
A4変形/ 192ページ/2026年3月刊行
委託:独立行政法人日本芸術文化振興会委託事業「令和7年度文化芸術活動の動向把握に向けた基礎資料収集事業」
*「Research & Reports」より全文をお読みいただけます。

I 映画館での上映
➡概況|公開本数・公開作品|諸外国との比較|都道府県別概況|全国映画館リスト2025
Ⅱ 公共上映
Ⅲ 特集|映画館(上映活動)の現状に関する詳細調査 兵庫県の2つの上映活動の詳細調査
Ⅳ 都道府県別上映施設一覧
Ⅴ 上映に関わる用語



